世の中を大きく変えた発明の陰には、その何百倍もの、役に立たなかった発明があります。動き続ける永遠の機械を夢見た人、人間そっくりに動く人形を作った職人、空を飛ぼうとして屋根から飛んだ人。彼らの多くは失敗しましたが、その執念は、いまもなお私たちを引きつけます。ここには、実用の道具ではなく、人の想像力と偏りが形になった機械を集めました。
成否がはっきりしないものは、そのように書いています。
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止まらない機械の夢
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外からエネルギーをもらわず、永遠に動き続ける装置。熱力学の法則により不可能と証明されたが、数え切れない設計図が描かれ、いまもインターネットに動画が出る。
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重りをつけた車輪が、片方だけ落ちることで回り続けるという図。永久機関のもっとも古い図の一つとされる。
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発明家ヨハン・ボルフが、ひとりでに回り続ける巨大な車輪を作ったと公表し、多くの見物人を集めた。のちに召使いの女が、隠れた部屋で自分がクランクを回していたと証言した。
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音の振動から莫大な力を引き出すと称した「キーリーの原動機」。投資家から巨額の金を集めたが、死後に、隠された圧縮空気の管が見つかった。
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水を入れたコップに向かい、くちばしを浸しては起き上がる、ガラス製の玩具。気温の差で動き続けるため永久機関のように見えるが、熱を取り込んでいる。
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熱を吸い取って、すべて仕事に変える機械。エネルギーの総量は保たれるが、熱力学第二法則により不可能とされる。
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分子の速さを見分けて速いものだけを通す小さな悪魔がいれば、熱が低いほうから高いほうへ流れてしまうという思考実験。物理学者を150年近く悩ませ、情報とエネルギーの関係を考えるきっかけになった。
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燃料なしで電気を生み出すと称する装置の総称。実証を求められると「まだ調整中」になるのが定番。
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磁石の力だけで永遠に回るというモーター。磁力は保存力であり、一周すればもとの位置に戻るので、仕事の総量はゼロになる。
からくりと自動人形
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自ら動いているように見える機械仕掛けの人形の総称。時計の技術を元に18世紀のヨーロッパで、貴族の道楽として爆発的に作られた。
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蒸気で回る「アイオロスの球」や、硬貨を入れると聖水が出る自動販売機を考案した発明家。神殿の扉が、火をつけるとひとりでに開く仕掛けも作った。
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笛を吹く人形、餌をついばみ排泄までする「消化するアヒル」で人々を驚かせた発明家。のちに自動織機の原型も作った。アヒルは、実は食べ物が消化されているのではなかった。
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穀物を食べ、羽ばたき、排泄まで行ったとされる機械のアヒル。排泄物は、あらかじめ入れておいた別のものだったとされる。
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ピエール・ジャケ=ドローが作った、ペンで手紙を書く少年、絵を描く少年、オルガンを弾く少女の三体。いまも動く状態で、スイスの博物館に残る。
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チェスを指す機械仕掛けのトルコ風の人形。ナポレオンやフランクリンも対戦して負けた。実は箱の中に人が隠れて操っていた。
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「近代奇術の父」ウダンは、時計職人としての腕で作った自動人形を舞台に使った。アルジェリアでは、その奇術で現地の指導者たちを驚かせた。
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盆に茶碗を載せると進み、取ると止まり、また戻る。鯨のひげのばねと歯車で動く。江戸のからくり人形の代表。
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田中久重のあだ名。「万年時計」という複雑な天文時計や、弓を射る「弓曳童子」を作った。のちに東芝の源流になる会社を興した。
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座敷からくり、山車からくり、芝居からくり。江戸のからくりには用途で三つの種類があり、祭りで山車の上の人形を動かす技は、いまも高山や犬山に残る。
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祈りの仕草をしながら歩く、木と鉄でできた自動人形の修道士。王子の病が治った礼としてスペイン王フェリペ二世が作らせたと伝えられ、いまもスミソニアン博物館に収められている。
役に立たない機械を愛する
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卵を割るだけのことに、ドミノや紐やシーソーを何十段もつなぐ、わざと大げさな仕掛け。漫画家ルーブ・ゴールドバーグが描き、日本では「ピタゴラ装置」として親しまれている。
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意味のない複雑な機械の絵を描いたイギリスのイラストレーター。ゴールドバーグのイギリス版とされ、英語では「ヒース・ロビンソンの仕掛け」が、無駄に凝ったものを指す言葉になった。
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面白いけれど日常では役に立たない実用品の総称。ネギを切る音の出る包丁や、猫の形の靴べらなど。
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一見実用的だが、実際に使うとかえって不便になる発明。「珍道具」の発想を、雑誌の連載を通して世界に広めた。『日本人の「珍」道具』。
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自分の髪を引っぱって沼から脱出した、と語ったほら吹き男爵。実在した人物の話に基づく、ほら話の代名詞。
空と海と地面の失敗作
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鳥のように羽ばたいて飛ぼうとする飛行機械。多くの発明家が挑んだが、ほとんどは飛ばず、ときに墜落した。
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テーラーのフランツ・ライヒェルトが、自作のパラシュート服の実験としてエッフェル塔から飛び降り、そのまま墜落死した。映像が残る。
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ルイ・ブレリオが、飛行機で初めて英仏海峡を横断した。多くの失敗機を作った末の成功だった。
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翼幅が世界一の巨大飛行機。ロケットを空中から打ち上げるために作られたが、計画は縮小された。
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大西洋を横断する豪華な旅客機として作られた巨大な機体。一機だけが試験飛行を行い、計画は打ち切られ、解体された。
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富豪ハワード・ヒューズが作った、木製の史上最大の飛行艇。一度だけ、約一分、水面すれすれを飛んだ。
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円盤の形の「空飛ぶパンケーキ」。奇妙な形の試験機で、実用化はされなかった。
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背中に背負って空を飛ぶ装置。映画のヒーローに憧れて何度も作られたが、飛行時間はほんの数十秒で、危険と高い費用が壁になっている。
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空気を吹き出して浮き上がり、水面や地面を滑るように進む乗り物。英仏海峡を渡る旅客船にもなった。
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ニコラ・テスラが、地球そのものを導体として世界中に電力と通信を送ろうと、ニューヨーク州に建てた塔。資金が尽きて未完成のまま取り壊された。
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バックミンスター・フラーが設計した、三輪で流線形の乗り物。後輪で舵を切り、前輪が駆動する。試作車が事故を起こし、量産されなかった。
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回転するジャイロスコープの力で、二輪のまま倒れずに立つ自動車。ロシアの伯爵が作った。
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ロス伯爵が城の庭に作らせた口径1.8メートルの巨大な望遠鏡。壁の間に吊るされた、世紀後半まで世界最大の望遠鏡で、渦巻き銀河の形を初めてとらえた。
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ベンサムが考えた円形の刑務所。中央の塔から全員が見えるが、囚人からは塔の中が見えない。誰かに見られているかもしれないと思わせて人を従わせる、監視の仕組みの象徴になった。
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ラジウムが体によいと信じられ、飲み水、化粧品、歯磨き粉にまで混ぜて売られた。愛飲していた実業家が骨の壊死で亡くなり、その害が知られるようになった。
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腰に巻けば体に電気が流れ、あらゆる病気が治るとして売られた金属のベルト。効果がないばかりか、皮膚を痛めることもあった。
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カレル・チャペックの戯曲。人造人間が労働のために大量生産され、やがて人間に反乱を起こす。「ロボット」という言葉が世に出た作品。
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ニューヨーク万博で展示された、歩いて話し、煙草を吸う機械の人間と、その犬。人々にロボットの未来を思い描かせた。
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人力でこぐ飛行機やグライダーで、琵琶湖の上を飛ぶ距離を競う大会。毎年、数十メートルで湖に落ちる人々に、観客が声援を送る。
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軽い骨組みに薄いフィルムを張った、人力で飛ぶ飛行機。ポール・マクレディが設計し、数字の八の字の飛行に初めて成功して賞金を得た。
発明家という変わり者
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交流電力の実用化に貢献し、無線送電の夢を追った発明家。晩年は困窮し、ホテルの一室で鳩を愛して暮らした。
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電球、蓄音機、映写機など千件以上の特許を取った発明家。霊界と通信する機械の構想を語ったともされるが、実物は作られなかった。
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ヘリコプターの原型のような空気ねじ、羽ばたき機、戦車の設計図を、ノートに残した。ほとんど実現せず、設計図として残った。
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エレキテルを復元し、火浣布や量程器を作り、鰻の日を広めたという逸話を持つ江戸の発明家・戯作者。最期は誤って人を殺して獄死した。
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「フロッピーディスクの発明者」を自称し、都知事選にも何度も出馬した発明家。数多くの珍しい発明を発表し、メディアに出続けた。
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ディーゼルエンジンの発明者。1913年に、英国へ向かう船から姿を消し、謎の死を遂げた。
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海の上でも狂わない時計「クロノメーター」を作った時計職人。経度を求められる時計の懸賞金をめぐって、学界と長く争った。
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蒸気機関のプロペラで空を進む、最初の飛行船を作った。
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歯車で計算する機械「階差機関」と、いまのコンピューターの原理を備えた「解析機関」を設計した。実現しなかったが、のちに設計図どおりに作られて動くことが確かめられた。
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バベッジの解析機関のために、世界で最初のプログラムとされる記述を残した女性。詩人バイロンの娘。
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球の両側から蒸気を噴き出して回転する装置。当時は玩具にしかならなかったが、蒸気の力の最初の一歩だった。
音を出す変な楽器と機械
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穴の開いたロール紙を読ませて自動で演奏するピアノ。ナンカロウが人間には弾けない複雑なリズムの曲を作るために使った。
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突起のついた円筒が金属の櫛の歯をはじいて音を出す、機械仕掛けのオルゴール。
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金属のラッパをつけたバイオリン。録音用に大きな音を出すために考案された。
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未来派の画家ルイジ・ルッソロが作った、騒音を出す箱型の楽器。街の騒音を音楽にしようと試みた。
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瓶に入ったヒルが雷雨の近づきを感じて鐘を鳴らす、という天気予報機。ヒルたちは実際に反応したかもしれないが、実用にはならなかった。
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