人の体は、最も身近な、そして最も分からない世界です。かつて医者は、瀉血で熱を下げ、水銀で梅毒を治そうとしました。自分の体で実験した医師たちもいれば、奇妙な症状に、名前をつけて記録した人々もいます。ここでは、医学の歴史に残った奇談を、痛みと敬意を忘れずに集めました。
医学的な助言ではなく、歴史と文化の記述です。
66語
名前のついた奇妙な症状
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物が大きく、または小さく見える症状。『不思議の国のアリス』にちなんで名づけられた。
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身近な人が、そっくりの偽物に入れ替わったと信じる妄想。
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自分は死んでいる、または存在しないと信じる症状。
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自分の片手が、意思と関係なく動く症状。映画『博士の異常な愛情』の登場人物の症状としても知られる。
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脳の損傷などのあとで、突然、外国人のような話し方になる症状。
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銀行強盗の人質が、犯人に好意を抱いた事件から名づけられた。
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聖地を訪れた旅行者が、自分を聖書の登場人物だと思い込む症状。
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美しい芸術作品を見て、めまいや動悸を起こす。フィレンツェで報告された。
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理想のパリと現実の落差に、日本人旅行者が失望して不調をきたす症状。
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本人の意思と関わりなく、体の動きや声が出てしまう症状。
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笑いすぎて亡くなったという記録が、古代から複数残っている。
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聖ヴィートの踊りとも呼ばれる、踊りが止まらなくなる現象。
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ツェツェバエが媒介する、寄生虫の病。昏睡状態に陥る。
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世界で流行した眠り病。生き残った患者は、長い眠りのような状態を過ごした。
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オリヴァー・サックスが、嗜眠性脳炎の患者に薬を投与したときの記録。映画にもなった。
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神経科医。『妻を帽子とまちがえた男』などで、奇妙な症状を持つ患者の物語を描いた。
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顔や物の認識に障害を持つ人々を描いたサックスの著書。
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音に色が見えるなど、一つの刺激が、別の感覚を生じさせる。
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基準音なしに、音の高さを正確に言い当てる能力。
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発達の特性を持ちながら、記憶や計算などに、並外れた能力を発揮する人々。
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本を、一ページ十秒ほどで読み、内容を記憶した。映画『レインマン』のモデルの一人。
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鉄の棒が頭を貫通しても生き延びたが、性格が変わったとされる。脳と人格の関係を考える手がかりとなった。
奇妙な治療と誤った医学
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悪い血を抜けば治ると信じて、血を流す治療。ワシントン初代大統領は、瀉血のため亡くなったとされる。
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脳の前頭葉の一部を切る手術。エガス・モニスは、ノーベル賞を受賞した。のちに、人格を損なうものとして批判された。
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アイスピックのような器具で、眼窩からロボトミーを行う方法を広め、数千人に手術した。
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梅毒や便秘の治療に、水銀が用いられた。多くの患者が水銀中毒になった。
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秦の始皇帝は、水銀を含む丹薬を飲んで、亡くなったという説がある。
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エジプトのミイラを、粉にして薬とした。ヨーロッパでは、需要が高かった。
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頭蓋骨に穴を開ける手術。先史時代の人骨にも見つかる。
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血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁の均衡が、健康を決めるとした学説。
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ヒルに血を吸わせる治療。現代でも、形成外科で使うことがある。
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脳に電気を流して、発作を起こさせる治療。うつ病などに、今も用いられる。
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ラジウムを溶かした水が、健康によいとされて売られた。
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発売当初は、頭痛や疲労を治す薬として売られたとされる。
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バイエル社が、ヘロインを咳止め薬として売り出した。
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ジェンナーが種痘を開発し、1980年に、人類が根絶した唯一の感染症となった。
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牛痘のウイルスで、天然痘を予防する。ジェンナーが考案した。
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医師が手を洗えば、産褥熱が減ると主張したが、当時の医学界に受け入れられなかった。
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ロンドンのコレラの流行を、井戸のポンプの位置から突き止めた医師。疫学の父。
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症状なしに、腸チフスを広めた調理人。何十年も隔離された。
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ユリウス・ワーグナー=ヤウレックが、神経梅毒の患者に、マラリアを感染させる治療を開発した。
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第二次世界大戦中に行われた、人を使った残虐な実験は、戦後の倫理規定の出発点となった。
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旧日本軍の防疫給水部。捕虜を使った人体実験が、行われたとされる。
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黒人の男性の梅毒を、治療せず観察し続けた研究。倫理の重大な違反として、後に、研究規制のきっかけとなった。
自分で試した医師たち
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ピロリ菌が胃潰瘍の原因であることを示すため、自ら菌を飲み込んだ。のちにノーベル賞を受賞した。
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自分の腕から、心臓にカテーテルを通して、X線で確認した。ノーベル賞を受賞した。
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外科医。梅毒の病原を調べるため、自分に、淋病の膿を接種したという逸話で知られる。
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外科医ハンターが集めた標本の博物館。「アイルランドの巨人」の骨格も展示されていた。
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黄熱の伝染を調べるため、蚊に、自分の身を刺させ、亡くなった。
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医学生。ペルー疣の原因を確かめるため、患者の血を自分に接種し、亡くなった。
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黄熱の研究に取り組み、ガーナで、黄熱に罹って亡くなった。
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教会の禁止で長らく行われなかった。ヴェサリウスが、1543年に『人体の構造』を出版した。
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日本で初めて、公式に人体解剖を行った医師。1754年、京都で、処刑された罪人の解剖を行った。
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杉田玄白と前野良沢らが、オランダ語の解剖書を翻訳した。
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世界で初めて、全身麻酔で乳がんの手術を行った医師。麻酔薬の実験に、母と妻が協力したとされる。
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エーテルによる麻酔の公開実験に成功した。
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子宮頸がんの細胞が、本人の同意なく培養され、世界中の研究に使われる「HeLa細胞」となった。
標本と医学博物館
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医学の標本や、奇形の記録を展示する博物館。
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X線を発見した物理学者。妻の手のX線写真が、最初期の一枚として知られる。
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ジョゼフ・メリック。体の変形のために、見世物にされたが、のちに、病院に迎えられた。
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二メートルを超える身長で知られた男。遺言に反して、遺体が標本にされた。
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チャンとエンは、胸で体がつながっていた兄弟。世界中で興行を行い、結婚して多くの子をもうけた。
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動物の標本と、蝋製の人体模型を、数多く収蔵する自然史博物館。
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人体を樹脂で固定した標本を展示する展覧会。倫理の面で、議論を呼んだ。
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グンター・フォン・ハーゲンスが、プラスティネーション技術で、人体を展示した展覧会。
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世界でも珍しい、寄生虫の博物館。標本は、約四万点。
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