「エロ・グロ・ナンセンス」は、昭和の初め、1930年前後に流行した言葉です。不況と戦争の気配のなかで、人々は色気と猟奇と馬鹿馬鹿しさを求めました。その時代と、前後に連なる系譜を集めました。
文学・美術・風俗史としての紹介です。性的・残酷な内容を扱う作品が多いため、作品そのものに触れる際はご注意ください。
89語
第一部時代と言葉
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エロティック、グロテスク、ナンセンスを縮めた流行語。世界恐慌後の不景気のなか、雑誌、カフェー、レビュー、猟奇事件の報道にこの三つが溢れた。満州事変以降、戦時体制が強まるにつれて取り締まられていった。
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洋装で銀座を歩く若者たち。断髪に短いスカートのモガは、新しい女性の象徴であると同時に、からかいと非難の的でもあった。
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当時のカフェーは珈琲を飲む店ではなく、女給が客の隣に座って接待する酒場だった。薄暗い照明、ジャズ、チップ。エロの舞台として小説や映画に繰り返し描かれた。
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見世物小屋、活動写真、オペラ、レビューが軒を連ねた東京最大の歓楽街。エログロナンセンスの時代の中心地だった。
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浅草にそびえた12階建ての展望塔で、日本初の電動エレベーターを備えた。塔の足もとには私娼街「十二階下」が広がっていた。関東大震災で崩れ、爆破解体された。乱歩の『押絵と旅する男』の舞台でもある。
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浅草・水族館の2階で旗揚げされたレビュー劇団。榎本健一(エノケン)が頭角を現した。踊り子が金曜日にズロースを落とすという噂が客を集めたが、それは噂にすぎなかったといわれる。
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川端康成が新聞に連載した小説。浅草の不良少女団と、カジノ・フォーリーを含む当時の浅草の風俗を、記録映画のように描いた。
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奇怪なもの、異常なものを好んで追い求めること。昭和の初めに流行語となり、1928年には雑誌『猟奇』も創刊された。新聞は殺人事件に「猟奇」の見出しをつけて部数を競った。
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隅田川の東にあった私娼街。迷路のような路地に「ぬけられます」の看板が掛かっていた。永井荷風が通い、小説『濹東綺譚』(1937年)に描いた。売春防止法の施行とともに消えた。
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昭和初期の「ナンセンス文学」の旗手。意味もなく軽妙な会話が続く小説で人気を集め、エログロナンセンスの「ナンセンス」の部分を担った作家。
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新宿駅前にあった軽演劇の劇場。屋根の上で赤い風車が回っていた。学生やサラリーマンに人気で、多くの喜劇人や作家がここから出た。
第二部雑誌と発禁本
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もとは地方の青年向けの雑誌だったが、海外の探偵小説の翻訳で人気を得て、江戸川乱歩、夢野久作、小栗虫太郎、久生十蘭らを世に出した。モダンで都会的な誌面で、昭和初期の文化を代表する雑誌。
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『新青年』の編集者で、モダンで幻想的な短編を書いた作家。谷崎潤一郎に原稿を依頼しに行く途中、乗っていた自動車が列車と衝突して27歳で亡くなった。
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風俗・性に関する研究書や翻訳を次々に出版し、発禁と摘発を繰り返した出版人。「発禁王」と呼ばれた。雑誌『グロテスク』では、発禁になった号の「死亡広告」を新聞に出して当局を挑発した。
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梅原北明が主宰した雑誌。猟奇、性風俗、古今東西の奇談を扱い、たびたび発売禁止になった。誌名そのものが時代の気分を表していた。
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犯罪、変態心理、世界の奇習を「科学」の名のもとに扱った雑誌。まじめな学者と怪しい書き手が同じ誌面に並んでいた。
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戦後のSM雑誌の草分け。読者の投稿を中心に、特殊な嗜好を真剣に論じた。沼正三の『家畜人ヤプー』はここで連載が始まった。
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未来の白人帝国で、日本人が「ヤプー」と呼ばれる家畜や生きた道具に改造されている世界を、膨大な設定とともに描いた小説。作者の正体は長く議論の的になった。
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『奇譚クラブ』に連載が始まったSM小説。何度も映画化され、団鬼六はこの分野の第一人者となった。
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梅原北明らが会員制で出した雑誌。性の風俗、奇習、秘本を「資料」として紹介した。当時の「変態」は、今より広く「普通でないもの」を意味する言葉だった。
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京都で創刊された探偵小説の専門誌。『新青年』とは別の舞台として、関西の書き手や新人が多く登場した。
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敗戦直後に大量に出回った、粗末な紙の娯楽雑誌。性と猟奇の記事ばかりで、すぐに廃刊になった。粗悪な密造酒「カストリ」は3合飲めば潰れる、それにかけて「3号で潰れる」と呼ばれた。
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戦後の探偵小説の中心となった雑誌。晩年の江戸川乱歩が自ら編集にあたり、多くの新人作家を送り出した。
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人形、耽美、ゴシック、異端の美術を特集した雑誌。球体関節人形の文化を広め、日本のゴシック趣味の源流になった。
第三部猟奇の文学
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日本の探偵小説の祖。一方で、椅子の中に潜む男を書いた『人間椅子』、自分だけの人工楽園を作る『パノラマ島奇談』など、覗き見と変身と倒錯の小説を書き、エログロの代名詞になった。
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戦争で四肢を失った夫と、その妻の閉ざされた暮らしを描く短編。反戦的とみなされ、戦時中は全文削除の処分を受けた。
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謎の探偵作家「大江春泥」に脅かされる人妻をめぐる中編。覗き、倒錯、変装が入り乱れ、乱歩の作風がもっとも濃く出た作品のひとつ。
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汽車で出会った老人は、押絵の額を大事に抱えていた。押絵の中には、若い娘と、老いさらばえた男がいる。浅草十二階の望遠鏡から始まる、乱歩の短編の最高傑作とされる。
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江戸川乱歩の小説を三島由紀夫が戯曲にし、それを映画化した作品。美輪明宏(当時は丸山明宏)が女賊・黒蜥蜴を演じ、美しい人間を剥製にしてコレクションする。三島自身が剥製の役で出演している。
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乱歩の小説を原作に、盲目の彫刻家がモデルの女を倉庫に閉じ込める。壁一面が巨大な女体の部位で埋まったアトリエは、日本映画史に残る異様な空間。
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乱歩の『パノラマ島奇談』と『孤島の鬼』を下敷きにした映画。暗黒舞踏の土方巽が、島で奇怪な楽園を作る男を演じた。長く国内でソフト化されず「封印映画」とされていた。
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椅子職人が自分の作った大きな椅子の中に潜み、座る人の感触を味わううちに、ある女性作家に恋をする。手紙の形で語られる乱歩の短編。
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下宿の天井裏を這い回って他人の暮らしを覗くことに取りつかれた男が、節穴から毒を垂らして殺人を企てる。明智小五郎が謎を解く。
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恋人を殺された青年が、謎を追って南の孤島にたどり着き、人を意図的に異形に作り変える恐ろしい計画を知る。乱歩の長編の代表作のひとつ。
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乱歩が生んだ名探偵。『D坂の殺人事件』で、もじゃもじゃ頭の書生風の青年として初めて登場し、のちに背広の紳士探偵になった。
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『怪人二十面相』から始まる子ども向けの連作に登場する、小林少年を団長とする少年たちの団。変装の名人・怪人二十面相との対決は、何度も映画やドラマになった。
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福岡出身の作家。『新青年』などに怪奇と幻想の作品を書いた。約10年をかけた長編『ドグラ・マグラ』を出版した翌年に急死した。
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精神病院で目覚めた記憶のない青年が、自分が誰なのかを探る。構想と執筆に10年以上をかけた作品で、「読んだ者は一度は精神に異常をきたす」という惹句で知られる。日本三大奇書のひとつ。
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無人島に流れ着いた兄妹が、瓶に詰めて海に流した三通の手紙だけで構成される短編。手紙を逆の順に読むと、恐ろしい物語が浮かび上がる。
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衒学趣味の探偵小説で知られる作家。オカルト、紋章学、医学などの知識を過剰に詰め込んだ文体は、読者を煙に巻きながら熱狂的な愛好家を生んだ。
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神秘思想、紋章学、物理学、音楽などの衒学的な知識が延々と続く探偵小説。筋を追うのが困難なほどの奇書で、日本三大奇書のひとつ。
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耽美と被虐の世界を書き続けた作家。デビュー作『刺青』から、女性の足への崇拝を描いた作品まで、倒錯した愛を美しい文章で描いた。
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カフェーの女給だった少女ナオミを理想の女性に育てようとした男が、逆に彼女に支配されていく。「ナオミズム」という流行語を生んだ。
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谷崎潤一郎のデビュー作。腕の立つ刺青師が、理想の美女の背中に巨大な女郎蜘蛛を彫り込む。彫られた娘は、男を食う魔性の女に変わっていく。
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サドの翻訳、黒魔術、毒薬、人形、幻想美術についてのエッセイで、日本に異端文学の趣味を広めた。翻訳『悪徳の栄え』がわいせつ文書とされた「サド裁判」では有罪となった。
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澁澤龍彦が責任編集した「エロティシズムと残酷の綜合研究誌」。三島由紀夫が聖セバスチャンに扮した写真を載せた創刊号は伝説になった。澁澤の編集は3号まで。
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エロティシズム、死、供犠を論じたフランスの思想家・作家。図書館司書として働きながら、偽名で過激な小説を書いた。
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フランスの思想家バタイユが偽名で出した小説。少年少女が「眼」と「卵」と「球」をめぐって倒錯の限りを尽くす。日本のエロティシズム論にも大きな影響を与えた。
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世界の猟奇事件を紹介した『世界怪奇実話』で人気を博した作家。林不忘の名で『丹下左膳』を、谷譲次の名でアメリカ放浪記を書いた、一人三役の書き手。
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怪奇小説と、嘘とも本当ともつかない奇妙な実話風の小説を書いた作家。直木賞の受賞作『ナリン殿下への回想』のほか、『逗子物語』などの怪談で知られる。
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探偵・金田一耕助の生みの親。旧家の因習、見立て殺人、不気味な風景を組み合わせた作品は、1970年代に映画化が相次いで大ブームになった。
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落ち武者の祟りが伝わる山村で起きる連続殺人を描く、金田一耕助シリーズの一作。村人を次々に襲う過去の惨劇の描写には、1938年に岡山で起きた実際の事件の影響がある。
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短歌の編集者として寺山修司らを見出し、作家としては『虚無への供物』を書いた。薔薇と幻想を愛し、「反地球」を夢見る作品を残した。
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素人探偵たちが推理合戦を繰り広げるうちに、探偵小説そのものが崩れていく「アンチ・ミステリー」。『ドグラ・マグラ』『黒死館殺人事件』と並ぶ日本三大奇書のひとつ。
第四部血と見世物
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殺しや責めの場面を血みどろに描いた浮世絵。月岡芳年と落合芳幾の『英名二十八衆句』(1866年〜1867年)が代表作。社会が揺れ動いた幕末に好まれた。
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縛られた女性を描く「責め絵」の画家。風俗考証家でもあり、江戸の風俗や芝居の資料を多く残した。
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祭りや縁日の境内に建てられた小屋で、蛇女、人間ポンプ、ろくろ首などを見せた。呼び込みの口上が名物だった。現在も興行を続ける一座はごくわずか。
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日本で最後の旅回りの見世物小屋の一座とされる。新宿・花園神社の酉の市などで小屋を掛ける。生きた蛇を食いちぎる「蛇女」の芸が知られた。
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水と一緒に金魚や碁石を飲み込み、客の注文どおりの順番で吐き出してみせる芸。見世物小屋の芸人・安田里美の芸として知られ、晩年まで各地の祭りの小屋に立った。
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本物の人間と見まがうほど精巧に作られた見世物の人形。熊本出身の松本喜三郎が浅草で興行して大評判になった。血を流す場面や、奇怪な異国人の人形も作られた。
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料亭の仲居だった阿部定が、東京・尾久の待合で愛人を殺害した事件。逃亡中から新聞が大々的に書き立て、世間の関心を集めた。のちに何度も映画化された。
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性をテーマにした人形、からくり、展示を集めた観光施設。温泉地を中心に全国に作られたが、ほとんどが閉館した。熱海秘宝館などわずかが残る。
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腐っていく身体、奇病、怪物になってしまった子どもを、どこか物悲しく描くホラー漫画家。『蔵六の奇病』が代表作。
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罪人が落ちる地獄の責め苦を描いた絵巻。燃えさかる炎、鉄の臼、巨大な鶏などが、罪人を容赦なく痛めつける。国宝。
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美しい女性が死んでから、膨らみ、腐り、鳥獣に食われ、骨になり、土に還るまでを九つの場面で描いた仏教絵画。肉体への執着を断つための修行に用いられた。
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少女漫画誌で恐怖漫画を描き、「ホラー漫画の神様」と呼ばれた。未来の荒野に校舎ごと飛ばされる『漂流教室』、若さを取り戻すために自分の脳を娘の体に移そうとする母を描いた『洗礼』などが代表作。
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『ガロ』で、中世の地獄絵のような血と汚物と怪物の漫画を描いた。改造した銃の所持で銃刀法違反に問われ、服役した体験を淡々と描いた『刑務所の中』は映画にもなった。
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「奇想漫画家」を名乗る漫画家。人体の分解、都市の改造、大量死を、どこまでも乾いたギャグとして描く。
第五部映画と舞台
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サーカスを舞台に、実際の身体障害を持つ芸人たちが出演したアメリカ映画。公開当時は大きな反発を受けて上映が禁じられた国もあったが、のちにカルト映画として再評価された。
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寺山修司が自らの少年時代を虚構として描き直した映画。恐山、サーカス、白塗りの人々が登場する。アングラ演劇の見世物的な美学が映像になった作品。
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花売りの少女みどりが、見世物小屋の一座に売られていく漫画。のちにアニメ化、実写映画化された。昭和初期の見世物とエログロの世界を再構成した代表作。
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白土三平の『カムイ伝』を載せるために創刊された漫画雑誌。原稿料がほとんど出ない代わりに表現の自由があり、つげ義春、花輪和一、丸尾末広ら異端の漫画家を多く生んだ。
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新東宝の怪奇映画。後半は丸ごと地獄めぐりになり、罪人が皮を剥がれ、串刺しにされ、臼で挽かれる場面が延々と続く。
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江戸時代の拷問と刑罰を見世物のように描いた東映の映画。ここから石井輝男の「異常性愛路線」が始まった。
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黒ずくめのガンマンが荒野をさまよい、聖者と奇形の人々に出会う。ニューヨークの深夜上映で評判となり、「ミッドナイト・ムービー」の元祖になった。
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「世界一下品な人間」の座をめぐって争う人々の物語。主演の巨漢ドラァグクイーン、ディヴァインが最後に行う行為で、映画史に悪名を残した。
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サドの小説をもとに、ファシスト政権末期の館で権力者たちが少年少女を監禁し、なぶりものにする。公開直前にパゾリーニは殺害された。各国で上映禁止になった。
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サラリーマンの身体が、少しずつ金属に侵されて鉄の怪物になっていく。モノクロのコマ撮りと轟音で作られた自主映画で、海外のファンタスティック映画祭で大きな評判を得た。
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人体破壊の過程を記録映像のように見せるビデオ作品のシリーズ。日野日出志が監督した第2作『血肉の華』は、アメリカで本物の殺人映像ではないかと疑われて、FBIが捜査したことがある。
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男が女をアパートの一室に閉じ込め、縛り、鞭打ちながら、自分の孤独を延々と語り続ける。ほぼ一部屋だけで撮られた低予算のピンク映画で、若松プロダクションの初期を代表する一本。
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新宿のゲイバーを舞台に、オイディプス王の物語を下敷きにした実験映画。当時16歳前後のピーター(池畑慎之介)が主演した。ドキュメンタリーの手法や早回しを混ぜた映像は、キューブリックにも影響を与えたと言われる。
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デヴィッド・リンチの長編第1作。工業地帯の暗い部屋で、男が妻の産んだ奇形の赤ん坊を育てる。5年がかりで撮影され、深夜上映で長く上映され続けてカルト映画になった。
第六部探偵小説の周縁
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医学者で、結核を病んで研究から退いたのち探偵小説と医学随筆を書いた。心臓の鼓動の記録が恋文になる『恋愛曲線』など、医学の知識を使った猟奇的な短編を残した。江戸川乱歩を世に送り出した後見人でもある。
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逓信省の電気試験所に勤める技師で、日本のSFの父と呼ばれる。電気や薬品、奇妙な機械を使った殺人を描く、奇怪な科学小説を「新青年」などに書いた。
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「新青年」で江戸川乱歩の『陰獣』や夢野久作の作品に挿絵をつけた画家。暗く湿った筆致の挿絵は、昭和初期の探偵小説の顔になった。数年で筆を折り、のちに息子はルポライターの竹中労。
第七部標本と蝋人形
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真珠の首飾りをつけ、うっとりした表情で横たわる等身大の蝋の女性像。胸と腹のふたを外すと、内臓を一つずつ取り出せる。医学教育のために作られ、フィレンツェのラ・スペーコラ博物館に残る。
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伝染病や性病の予防を教えるために開かれた展覧会。病に冒された身体の蝋模型や標本が並び、教育の名を借りた見世物として大勢の客を集めた。江戸川乱歩の小説にも影を落としている。
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上半身が人、下半身が魚のひからびた「人魚」。江戸時代に見世物や輸出品として作られ、寺に納められたものもある。岡山の寺に伝わる一体を調べた2023年の研究では、布、紙、綿、魚の皮などで作られていたことが分かった。
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フィラデルフィア医師会の医学博物館。数百の頭蓋骨、奇形の骨格、身体が石鹸のような物質に変わった「ソープ・レディ」、アインシュタインの脳の切片などが並ぶ。
muttermuseum.org
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