書店の奥の棚や古書店の均一台で出会う本と雑誌を集めました。形そのものが仕掛けになった小説、横道にそれ続けて主人公が生まれない物語、読者の投稿でできた雑誌、「トンデモ本」を愛でる会。探偵小説と猟奇の雑誌は「エログロナンセンス」の分類にも収めています。
刊行年は原書の初版の年です。雑誌は創刊から休刊・終刊までの年を添えています。
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第一部形が仕掛けになった本
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消えた民族ハザールの改宗をめぐる、キリスト教・イスラーム・ユダヤ教の三つの資料を、事典の形に並べた小説。どの項目から読んでもよく、一段落だけが違う「男性版」と「女性版」が作られた。
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主人公が自分の生涯を語り始めるが、話が脱線を続け、本人がなかなか生まれない小説。登場人物の死を悼む真っ黒なページや、墨流しのページ、読者が自分で描くための白紙のページが挟まっている。
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外から測るより内側のほうが広い家をめぐる小説。注釈の中に注釈が入り、文字が逆さまや斜めに組まれ、ページをめくる手つきまでが家の迷宮に引き込まれていく。
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科学者カントレルが、郊外の屋敷に客を招き、奇妙な発明を順に見せて回る小説。ルーセルは同じ音の言葉を組み合わせて筋を作るという独自の手法で書き、シュルレアリストたちに崇められた。
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「潜在文学工房」の略。作家と数学者が集まり、決まりごとを課して書く方法を研究した。「e」の文字を一度も使わないジョルジュ・ペレックの長編『煙滅』(1969年)が知られる。
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14行のソネットを10篇、1行ずつ切り離せるように製本した本。行を自由に組み替えると10の14乗、つまり百兆通りの詩ができる。一生かけても読み切れない一冊。
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フランス語でもっともよく使う文字「e」を一度も使わずに書かれた長編小説。消えた文字そのものが、物語の中の失踪事件と重ねられている。
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パリのあるアパルトマンの建物を輪切りにして、各部屋の住人と物を、チェスのナイトが盤を一巡りする順番で描いていく長編。メディシス賞を受けた。
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章が進むごとに、かなの音がひとつずつ世界から消えていく小説。その音を含む言葉は使えなくなり、その言葉が指していた物や人も消える。最後の一音まで書き進められる。
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段ボール箱を頭からかぶり、覗き窓から街を見ながら暮らす男の手記という形の小説。誰が書いているのか、何人の箱男がいるのかが、読み進めるほど分からなくなる。
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推理小説好きの若者たちの間で起きた事件を、作中の小説と現実が入れ子になって描いたミステリ。『ドグラ・マグラ』『黒死館殺人事件』『虚無への供物』の「三大奇書」に続く、四つ目の奇書に数えられることがある。
第二部奇妙な事典と怪しい書物
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皮肉と毒舌で言葉を定義した辞典。新聞に連載したものを、最初は『冷笑家の語彙集』の名で出した。以後、世界中で真似されるパロディ辞典の手本になった。
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無限の図書館、すべてを映す一点、架空の百科事典から現実が侵食されていく国などを、短い物語や書評の形で書いた作家。のちに視力を失いながら、国立図書館の館長を務めた。
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ボルヘスがマルガリータ・ゲレロと、神話や古い書物に出てくる想像上の生き物を集めた小事典。カフカの想像した動物や、C・S・ルイスの怪物まで、100を超える項目が短く記される。
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ボルヘスの短編「ハーバート・クエインの作品の検討」に登場する、実在しない作家。枝分かれする小説などの存在しない本が、書評の形で細かく語られる。架空の本を論じるという遊びの代表例。
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六角形の部屋が果てしなく連なり、すべての文字の組み合わせでできた本を収めた図書館の話。意味のある本はそのごく一部で、司書たちは一生をかけて探し続ける。のちに『伝奇集』に収められた。
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貴族デ・ゼッサントが世間を嫌って郊外の屋敷にこもり、香水、宝石、ラテン語の文学、奇妙な花だけに囲まれて暮らそうとする小説。甲羅に宝石をはめた亀は重さで死んでしまう。「デカダンスの聖書」と呼ばれた。
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悪の化身マルドロールが神と人間に戦いを挑む散文詩。「解剖台の上でのミシンと雨傘の偶然の出会いのように美しい」という一節は、シュルレアリストたちの合言葉になった。作者は24歳で亡くなった。
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月や星、飛行機、少年を題材に書き続けた作家。月から落ちてきた男や、星を拾った話などを、1ページにも満たない短い話に収めた『一千一秒物語』(1923年)で知られる。
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月や星と喧嘩したり、ポケットに入れて持ち帰ったりする、ごく短い話を70ほど集めた作品集。足穂のデビュー作で、モダンで乾いた幻想が詰まっている。
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ドイツ文学者。錬金術、自動人形、詐欺師、吸血鬼、迷宮といった、歴史の暗がりにあるものを博識で掘り起こす随筆を書き、澁澤龍彦と並ぶ異端文学の案内人になった。
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博物学者・作家。平将門の怨霊と帝都東京をめぐる伝奇小説『帝都物語』(1985年〜)で知られる。古い博物図譜や妖怪、神秘学の収集と紹介に、膨大な私財を注いだ。
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平将門の怨霊で帝都・東京を滅ぼそうとする魔人・加藤保憲と、それを阻もうとする人々の百年にわたる戦いを描いた伝奇小説。1988年に映画化された。
第三部雑誌と出版の地下水脈
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怪奇と幻想を専門にしたパルプ雑誌。H・P・ラヴクラフトのクトゥルフの物語や、ロバート・E・ハワードの『英雄コナン』、クラーク・アシュトン・スミスの幻想譚が載った。
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道具や本を読者に紹介するカタログ雑誌。自給自足の暮らしを目指す若者たちのために作られた。最終号の裏表紙の言葉「Stay hungry. Stay foolish.」は、のちにスティーブ・ジョブズが引用して広く知られた。
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『ホール・アース・カタログ』の最終号の裏表紙に、早朝の田舎道の写真とともに記された言葉。2005年、スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学での演説で引用して広く知られた。
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V・ヴェイルが作った出版社・雑誌。J・G・バラード、刺青や身体改造を扱った『モダン・プリミティヴズ』、忘れられたB級映画の『インクレディブリー・ストレンジ・フィルムズ』など、主流の外の文化を記録した。
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個人や仲間内で作り、コピー機で刷ってホチキスで留めるような小さな自主出版の冊子。SFファンの同人誌から始まり、パンクの時代に広まった。
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萩原朔美らが編集した、読者の投稿が誌面の中心となる雑誌。くだらなさを競う投稿欄や、糸井重里の「ヘンタイよいこ新聞」などから、パロディの時代の空気が生まれた。
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松岡正剛が編集した雑誌。物理学、神秘思想、芸術、遊びを一つの号の中で自在に行き来する特集と、文字と図版を詰め込んだ誌面で、のちの編集者やデザイナーに影響を与えた。
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書店ではなく路上の自動販売機で売られた成人向けの雑誌。取次を通らないため編集の自由がきき、一部の雑誌には前衛的な記事が載った。『Jam』は歌手のゴミを漁る企画で悪名を残した。
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著者の意図とは違う意味で面白い本を「トンデモ本」と呼び、集めて楽しむ会。『トンデモ本の世界』(1995年)がベストセラーになった。
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著者が大真面目に書いたのに、意図とは違う意味で楽しめてしまう本のこと。と学会の『トンデモ本の世界』(1995年)がきっかけで広まった。
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青山正明が編集したムック。ドラッグ、死体、変態、犯罪などの危うい題材を並べ、1990年代の「鬼畜系」と呼ばれた出版の流れを代表する一冊になった。
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町山智浩らが作った映画のムック、のちに雑誌。B級映画、ホラー、カンフー、残酷映画を本気で語る誌面で、熱心な読者を集めた。
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サブカル辞典
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