売れ筋の外側で描かれ、あとから時代の芯だったと分かった漫画を集めました。原稿料がほとんど出なかった雑誌、貸本屋の棚、規制と抗議、そして夢をそのまま紙に写したような作品。
作品の年は連載や初出の年です。雑誌の号数や単行本の版によって前後することがあります。
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第一部『ガロ』と『COM』の作家たち
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貸本漫画の出版社を経て青林堂を興し、1964年に『ガロ』を創刊した編集者。原稿料はほとんど払えなかったが、ほかの雑誌が載せない新人を次々に世に出した。
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忍者漫画で人気を得たのち、1964年の『ガロ』創刊とともに『カムイ伝』の連載を始めた。江戸時代の身分制度と一揆を描く大長編で、学生運動の世代に熱心に読まれた。
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江戸時代の身分制度の下で生きる忍者カムイと農民、武士たちを描いた長編。『ガロ』はこの作品を載せるために創刊されたといわれ、学生運動の世代に熱心に読まれた。
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貸本漫画から出発し、1960年代後半に『ガロ』で『沼』『紅い花』『ねじ式』などを発表した。鄙びた温泉宿や旅、夢をそのまま写したような作品は、のちの漫画や映画、文学に大きな影響を残した。
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メメクラゲに腕を噛まれて静脈を切られた少年が、医者を探して見知らぬ漁村をさまよう短編。『ガロ』の臨時増刊に載った。夢を描いたとされる筋のない展開と奇妙な台詞は、何度もパロディにされてきた。
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山あいの釣り場で店番をする少女キクチサヨコが、初潮を迎える一日を描いた短編。叙情的な風景とともに、つげ義春の代表作とされる。
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ひなびた湯治場を訪れた男が、自分とそっくりな宿の主人の噂を聞く。天狗の面をかぶった男が歩く夢のような場面で知られ、1993年に映画化された。
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手塚治虫が『ガロ』に並び立つように創刊した漫画誌。『火の鳥』を連載し、新人の投稿欄から多くの作家を送り出した。発行元の経営難もあって、数年で幕を閉じた。
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漫画家の苦しい暮らしや、新宿にたむろするフーテンの若者の鬱屈を描いた。『漫画家残酷物語』や、『COM』に連載した『フーテン』は、青年漫画の先駆けとされる。
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1966年に『ガロ』でデビューし、物語の筋を解体したような実験的な漫画で読者を戸惑わせた。のちに絵本作家として活躍し、村上春樹の初期作品の表紙絵でも知られる。
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東京・玉の井の色街で過ごした子ども時代を描いた『寺島町奇譚』を『ガロ』に連載した。細かく描き込まれた昭和の下町の路地と、独特な形の吹き出しで知られる。
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1970年代の『ガロ』で作品を発表した漫画家で、安部慎一・鈴木翁二とともに「一二三トリオ」と呼ばれた。1980年に東京・中野で古書店「まんだらけ」を開き、漫画古書の世界を大きく変えた。
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1970年代の『ガロ』で、恋人の美代子との暮らしを題材にした私小説のような漫画を描いた。長い休筆をはさんだその作品と人生は、映画『美代子阿佐ヶ谷気分』(2009年)になった。
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看板屋やちり紙交換などの仕事を経て、1973年に『ガロ』でデビュー。脈絡なく人が死ぬ不条理な漫画を描き続けたが、のちにテレビタレントとして広く知られるようになった。
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自ら「特殊漫画家」を名乗り、汚く濃密な画面の漫画を描いた。社会の片隅で生きる強烈な人々を「因果者」と呼んで追いかけ、その記録『因果鉄道の旅』も書いた。
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1980年に『ガロ』でデビューし、江戸の町人の暮らしや風俗を、当時の絵の調子を生かして描いた。『百日紅』『百物語』などを残し、漫画家を引退したあとは江戸風俗研究家として活動した。
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少女漫画誌でデビューしたのち、『ガロ』などで、いじめや人づきあいの息苦しさを乾いた笑いに変えた漫画を描いた。1992年に24歳で亡くなり、残された日記や作品がのちにまとめて刊行された。
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1990年に『ガロ』でデビュー。かわいらしい猫の姉弟が、無邪気なまま残酷なことをする『ねこぢるうどん』で人気を集めた。没後、夫の山野一が「ねこぢるy」の名で作風を引き継いだ。
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『三丁目の夕日』を思わせる題で、貧しい少年に次々と不幸が降りかかる『四丁目の夕日』などを発表した。救いのない悲惨さを徹底して描く作風で、根強い読者を持つ。
第二部貸本と劇画
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店で本を借りる貸本屋向けに作られた漫画の単行本。子ども向けの雑誌とは別の流通で、暗い題材や写実的な絵柄が試され、劇画や怪奇漫画の苗床になった。
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辰巳ヨシヒロやさいとう・たかをら貸本漫画家が結成したグループ。子ども向けの「漫画」と区別して、大人の読者に向けた写実的な作品を「劇画」と呼ぼうと宣言したが、ほどなく解散した。
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1957年に自分の作品を「劇画」と名づけた人。都会の孤独な男たちを描いた短編は、日本より先に海外で高く評価された。自伝的な『劇画漂流』で手塚治虫文化賞を受けた。
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辰巳ヨシヒロが、劇画が生まれた時代の大阪の貸本漫画の世界と自分の青春を描いた自伝的な長編。2009年に手塚治虫文化賞大賞を受けた。
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武士の残酷な宿命を、執拗なまでに描き込んだ筆で描く時代劇画家。貸本時代の『血だるま剣法』(1962年)は差別の描写をめぐって抗議を受けて回収され、長く封印されたのち2004年に復刻された。
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広告の仕事から劇画に転じ、『同棲時代』(1972〜73年)で若い男女の暮らしを描いて流行語を生んだ。艶やかな女性の絵から「昭和の絵師」と呼ばれた。
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学生運動の時代の若者を、写真のように緻密な絵で描いた劇画家。『COM』などに発表した作品は、1970年前後の若い漫画家たちに強い影響を与えた。
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雨の夜の街と、「名美」と「村木」という男女を繰り返し描いた劇画家。『天使のはらわた』は日活ロマンポルノで映画化され、のちに自ら映画監督として同じ世界を撮り続けた。
第三部怪奇と悪夢
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日野日出志らの怪奇漫画を、「ひばりヒットコミックス」などの叢書で大量に出した出版社。けばけばしい表紙と題名の単行本は、いまでは古書として熱心に集められている。
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貸本の怪奇漫画から出発し、黒魔術を操る少女・黒井ミサを主人公にした『エコエコアザラク』(1975年〜)で人気を得た。題名は魔女の呪文から取られている。
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1974年に『生物都市』で手塚賞に入選。古代史や民俗学、神話を題材に、この世の外側がのぞく伝奇漫画を描き続けている。『妖怪ハンター』『暗黒神話』『西遊妖猿伝』などがある。
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異端の考古学者・稗田礼二郎が、日本各地の古い伝承に隠された異形のものに出会う連作。『週刊少年ジャンプ』で始まり、長く描き継がれた。
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墨のにじみを生かした独特の筆で、怪奇と幻想の短編を描く漫画家。探偵役の夢幻魔実也が活躍する『夢幻紳士』のシリーズで知られる。
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歯科技工士として働きながら投稿した『富江』で1987年にデビュー。殺されるたびに増える美少女、町じゅうが渦に取り憑かれる『うずまき』など、日常が静かに狂っていく恐怖を描き、海外でも熱心に読まれている。
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殺されても切り刻まれても、その肉片から再生して増え続ける美少女・富江の話。伊藤潤二のデビュー作で、楳図かずおの名を冠した賞で佳作になった。何度も映画化された。
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海辺の町が、渦巻きの形に取り憑かれて少しずつ狂っていく連作。巻き貝になる人、渦を巻く髪、町を包む竜巻。2024年にアメリカのアダルトスイムでアニメになった。
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悪魔と合体した少年が人類のために戦う物語は、終盤で人間同士の魔女狩りと世界の終わりへ転がり落ちていく。少年誌に載ったとは思えない結末は、後の漫画やアニメに大きな影響を与えた。
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飢饉の中世を舞台に、生きるために人肉を食べた母から生まれた少年の物語。第1話が載った少年誌は、神奈川県などで有害図書に指定され、社会問題になった。
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のちに『がきデカ』で一世を風靡するギャグ漫画家が、少年誌に描いた暗い近未来の物語。軍国主義に戻った日本で、国家による隠蔽と差別に巻き込まれていく少年を描く。
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人間の脳を乗っ取る謎の生物が現れ、右手だけを奪われた高校生が、その生物と奇妙な共生を始める。顔が花のように裂けて人を喰う描写とともに、人間とは何かを問う物語として読まれ続けている。
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魔法使いに頭をトカゲに変えられた男カイマンが、本当の顔と記憶を探す物語。汚れた街「ホール」、血と暴力、そして妙に和やかな食卓が同居する、唯一無二の世界が描かれる。
第四部笑いの底が抜けたもの
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『おそ松くん』『天才バカボン』のギャグ漫画家。連載の一回を左手で描く、極端に大きなコマや小さなコマで埋め尽くすなど、漫画の約束事そのものを壊す実験を人気雑誌の上で繰り返した。
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汚く崩れた絵柄と、同じコマを何度も使い回す手法、老婆が突然すべてを台無しにする展開で知られるギャグ漫画家。『珍遊記』は少年ジャンプに連載された。
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人気漫画家だった作者が仕事を放り出して失踪し、ホームレス生活や配管工の仕事、アルコール依存症の治療を体験した日々を、かわいらしい絵柄で淡々と描いた。
第五部海の向こうのコミックス
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少年ニモが毎晩夢の国を冒険し、最後のコマでベッドから落ちて目覚める新聞漫画『夢の国のリトル・ニモ』(1905年〜)を描いた。歪む建物や伸びるベッドなど、紙面いっぱいの夢の描写は100年後も驚きを失わない。アニメーション『恐竜ガーティ』の作者でもある。
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少年ニモが毎晩夢の国を冒険し、最後のコマでベッドから落ちて目を覚ます新聞の日曜版漫画。コマの形まで自在に変える構成は、100年以上たった今も驚かれる。
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マッケイが一枚ずつ手で描いたアニメーション。舞台に立ったマッケイが呼びかけると、スクリーンの恐竜が応えて動くという、実演と組み合わせた見世物として上映された。
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ネズミのイグナッツがレンガを投げつけ、猫のクレイジーはそれを愛のしるしと受け取り、犬の巡査がネズミを追う。この三角関係だけが30年繰り返された新聞漫画。コマごとに背景の砂漠が勝手に変わる。
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コミックが少年非行を生むとして議会で公聴会が開かれたのを受け、出版業界が作った自主規制の規範。題名に「恐怖」「戦慄」の語を使うことまで禁じ、ECコミックスの怪奇漫画を廃刊に追い込んだ。
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コミックス・コードの審査を通さず、ヒッピー向けの雑貨店などで売られた漫画の小冊子。性や薬物、政治を好き放題に描き、のちのオルタナティブ・コミックスの源流になった。
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1968年に『Zap Comix』を出し、アンダーグラウンド・コミックスの時代を開いた。セックスとドラッグ、自分の欲望と劣等感をさらけ出した作品は、称賛と非難を同時に浴びてきた。
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ロバート・クラムが描いた、女好きで口の達者な猫の大学生。1972年にラルフ・バクシが無断に近い形でアニメ映画にし、成人向けのX指定を受けたアニメとして話題になった。
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メビウスやフィリップ・ドリュイエらが創刊したフランスのSF・幻想漫画誌。細密で奇怪な異世界の絵は、アメリカ版『ヘヴィ・メタル』を通じて映画やゲームの美術にまで影響した。
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西部劇漫画『ブルーベリー中尉』をジャン・ジロー名義で描きながら、メビウス名義では台詞のない『アルザック』など、夢のようなSFを描いた。大友克洋や宮崎駿をはじめ、日本の作家にも大きな影響を与えた。
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ホドロフスキーが原作、メビウスが作画したSFのバンド・デシネ。冴えない探偵ジョン・ディフールが、宇宙の運命を握る光の結晶「アンカル」を手にする。幻に終わった映画『DUNE』の構想が流れ込んでいるといわれる。
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アート・スピーゲルマンとフランソワーズ・ムーリーが始めた大判の前衛漫画誌。凝った造本で知られ、のちにピューリッツァー賞の特別賞を受ける『マウス』はここで連載された。
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1970年代のシアトル郊外で、性交によってうつり、体に奇妙な変形をもたらす病が高校生たちの間に広がる。白と黒のくっきりした絵で、思春期の不安をそのまま怪物にした作品。
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